夢小説2

首をニワトリのように振ってリズムを取ってしまう。

遠慮ない友人に指摘されるまで気づかなかった私の癖だ。


今も私はそんな感じで首を振っている、CDショップで好きなミュージシャンの曲が流れていたのだ。外で大きな音で音楽が鳴っているとつい自分がその音楽のミュージックビデオに入ったような気持ちになってしまう。
今もCDを吟味しながら首を振ってる私をカメラが捉えている気がして猫背も何となく伸びる気持ちだ。

CDを棚に返す音がつい音楽とリンクしてしまってリズムを取ってるなコイツ…と思われていないか周りを慌てて見まわす。

誰もいない

今どきCDショップでCDを借りるという行為をする人間は少ないだろう、26の私でさえ周りの皆はサブスクリプションを使うか動画配信サービスを使っている。ただ自分で手に取って音楽と気分で出会うのが楽しいので私はこの方法で音楽と触れ合っている。

好きなミュージシャンの音楽はまだ頭上で流れている。

ノリにノってやろうと思い、サビに合わせて口パクをしながら力強くターンをした。華麗に。
そんな私を眺めていた男がいるとは気づかなかった。









ポイントカードを店員さんに差し出す瞬間に気づく、
「あ」
モニターに私が首を振っていた場所が映っていた。
監視カメラがあったとは…!

変な間ができてしまったのと見られていたかもしれない恥ずかしさから焦ってしまう。しかし監視カメラは何かあった時のものでわざわざじっと眺めている奴もいないだろう…そう自分を励ましつつポイントカードにハンコが押されているのをじっと見つめる。

しかし返される瞬間、レジの店員さんが言う。
「俺もあの曲好きなんですよ。」


そこで初めて店員さんがそのミュージシャンの髪型を意識して失敗している頭な事、胸元にファンクラブ限定の缶バッジをつけている事と、男性な事に気づいた。


殺してやろうかと思った。







私は帰りながら体中の全ての血を沸騰させていた。

普通見てても黙っておくのが礼儀ではないか?!
これだからあのミュージシャンを好きな奴はメンヘラだとか言われるんだ、変な仲間意識もたれても困る。帰り際これ見よがしに胸元の缶バッジ見せてくんじゃねえよ、少し好きなものや共通点があるだけでオタクの信頼度すぐあがるの何とかしてほしい…

普段の自分にブーメランのように刺さる悪態を永遠と心の中で吐いていた。

これ以上ないほど肩が怒りで盛り上がってしまう、私の肩が噴火しそうだ。
痴態を得体の知れない男に見られたことにより震えつつ温度が上がる。
肩がそろそろ危ない、肉片とか飛び散りだしそうな時、その肩を叩かれた。

頭の中で八つ裂きにしている本人だった。

つい睨めつけてしまう。
なんでさっきの店員さんがここに?

もしかしてもうさっきので私の事好きになって連絡聞きに来たのか!?

肩が更に盛り上がるAKIRAの鉄雄の最後のように私の体がブクブクと怒りで膨れる、目の前の男を圧死させようとする私の体を止めて男が話しかけてくる。

「すみません…このクーポンお渡しするの忘れていて…」


毛むくじゃらの手から小さく15%オフと書かれた紙が見えた。


ぷしゅー
私の体がしぼんでいく。

あ、はい、ありがとうございま…はい…失礼します。

ペコペコとお辞儀をしあって別れる。

そっと振り返ると男は慌てて店に走って帰っていた、レジを空けてきたのだろう。15%オフの文字が男の汗で少しにじんでいて少し笑ってしまう。

別にわざわざ追いかけてこなくてもいいだろうに…
自分と同じ、もしくはそれ以上の不器用さに困ってしまった。

本当に困る。

オタクは少しでも共通点が見つかると信頼度がすぐ上がってしまうのだ。








その後、徐々に非常に遅いペースで私たちは仲良くなりその毛むくじゃらの男に私は告白された。
その男が勤めている出会いの場であるCDショップで。

ここがお前のホームグラウンドとはいえ職場で職務時間中に?

色々思う事があるが私の返事は決まってしまっている。

その時も後ろで好きなミュージシャンの音楽が流れていた。だから、今なのかと気づく。そんなロマンチストと言えば聞こえがいいが気持ち悪い男なのである。

私は腹立たしいので返事は口に出さずに首を縦に振る。


リズムを取ってるように見えたかもしれない。



おわり







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